足が不自由な母に動きやす家を探して、新築マンションを見つけた。ショッピングセンターも近くて、そこに行く道は平たんだ。さらに敷地内に公園もあって、散歩も楽しくできそう。絶対に気に入ると確信してモデルルームへ一緒に行ったところ、母はイヤだと言う。
母一人で暮らすには今の家は不自由すぎる、２階に上がる階段は、去年からあきらめた。
布団も洗濯も和室に干してるじゃない。ここならトイレもお風呂も段差がないし、なんでイヤなの？
父は２年前に亡くなった。両親が結婚したのは38年前。
母にとって2回目のお見合いで、シュッとしている父がカッコ良かったらしい。ドライブが好きだった父が運転して、１泊旅行によく行っていた。どこに行くのも一緒、みたいな絵にかいたようなオシドリ夫婦。
父方は浄土真宗本願寺派で、長野のお墓に埋葬した。
そして、今は母の家に仏壇がある。LDKの新築マンションには、その仏壇を置くスペースが見当たらない。
好物の鰻を食べているとき、母が「お仏壇はどこに置くの？」とつぶやいた。
そうか、それがイヤだの原因だったんだ。
LDKと仏壇、解決の糸口は意外なところにあった。妻が「LDK 仏壇」と検索したら、画像がたくさん見つかった。同じような悩みを持つ人がなんと多いことか。
そして、オシャレな家具の一部に収納できている。
へえー、こんなことになっているとは知らなかった。母に見せたところ、あら良いじゃない、と今度は即答。無事に引っ越しが完了。
これからも父さんのそばで元気に暮らしてね。母さん。
※物語はフィクションです。また、写真はイメージです。