Vol.1 悩ましいね、本棚は家族を映す鏡なんだって

本棚にどんな本があるのかを友達に見られるのは嫌いじゃない。
その本がきっかけで話が弾むこともよくある。リビングの壁に全面を
使った本棚をこしらえた。上の棚は夫の場所。中断は私で、下は子供
たちのスペース。本棚の前は、落ち着いた気持ちで過ごせる。

夫は時代モノや人情小説好き。池波正太郎、藤沢周平、山本周五郎
などがずらりと並ぶ。
私はいろいろ。ムックの『バラの育て方』、文庫本の「空飛ぶタイヤ』
横山光輝の『伊賀の影丸』。
子供たちは絵本。今は『スイミー』が一番のお気に入り。
レゴのバケツも下の段にいる。

本棚の前で子どもたちが大好きな「絵本とビスケットとカルピス」の
時間も、安心できる仕掛けがある。
この本棚は壁に固定されていて、震度7でも倒れないそうだ。
南海トラフという不安な言葉と隣り合わせで暮らしているけれど、
ウチの本棚は大丈夫。

話は変わるけれど、本棚は同じでも時間とともに中身は変わる。
夫の棚には落語のDVDブックが加わった。子どもたちにはクマの
プーさんの英語の絵本が仲間入り。
私は、家族の写真を飾っている。時間を掛けて本棚が新陳代謝して
いるみたい。

新しい本は脳を刺激してくれる。花びらが折り重なるように、知識
となって貯まっていく。
誰かが言っていたけれど、知識の量がセンスの源泉らしい。
本棚は私たち家族を映す鏡かもしれない。
これだけ知識を持ちましたよ、センスの素はありますよ、と確認する
場所。ちょっと悩ましいけれど、とっても楽しい場所。

※この物語はフィクションです。また、写真はイメージです。